バスケットボールにおいて、ディフェンスの重要性は今も昔も変わらない。特に現代NBAの攻撃の中心となるのはピック&ロール(P&R)だ。そのため、これを封じるディフェンスの役割は年々重要性を増している。
その最前線に立つのがPoA(Point of Attack)ディフェンダーだ。彼らは相手のボールハンドラーに対する第一の壁として、試合の流れを左右する存在である。
PoAディフェンスとは?
PoAディフェンスとは、主に相手のガードやスコアラーがピック&ロールやアイソレーションを仕掛ける際に、最初に対応するディフェンダーの守備を指す。
これが機能することで、チームのヘルプディフェンスの負担が減り、守備ローテーションが崩れにくくなる。
「PoSディフェンダー」を言い換えれば、相手チームのエースを直接マークし、その攻撃を封じるエリートディフェンダーともいえる。
PoAディフェンダーの主な役割
- ピック&ロールのディフェンス
- アイソレーションでの1on1対応
- 相手のドリブルドライブを制限
- スクリーンを回避しながらマークを維持
- ターンオーバーや悪いショットを誘発
PoAディフェンダーが優秀であれば、相手のオフェンスのリズムを崩し、スムーズな攻撃展開を阻止することができる。逆にこのポジションが脆弱だと、簡単にペイント内へ侵入を許し、チームのディフェンスが崩壊するリスクが高まる。
NBAトップレベルのPoAディフェンダー
少し以前の記事であるが、米バスケットボールメディア「CrownHoops」のスポーツライターMatt Huff氏によれば、現役NBAで最も優れたPoAディフェンダーとして、以下の5名が挙げられているので紹介します。
*所属チームは記事執筆時の2022年当時のもの
1. アレックス・カルーソ(シカゴ・ブルズ)
フットワークの鬼と称されるカルーソは、常に相手の動きを先読みし、スクリーンをスムーズに回避する能力を持つ。彼のプレッシャーディフェンスは、相手ガードにとってまさに悪夢だ。
2. ゲイリー・ペイトン2世(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)
「ヤング・グローブ(父のニックネーム“グローブ”から)」の異名を持つペイトン2世は、圧倒的なフィジカルと瞬発力で相手のオフェンスを封じる。プレーオフでも有効なディフェンス力を発揮することが証明されている。
3. マティス・サイブル(フィラデルフィア・76ers)
スティールとブロックのスペシャリストであり、オフボールディフェンスも優秀な選手。相手のパスコースを読み、ミスを誘発する能力はリーグ屈指である。
4. ドリュー・ホリデー(ミルウォーキー・バックス)
NBAのガード陣にとって、ホリデーほど厄介なディフェンダーは少ない。強靭なフィジカルと高いIQで、相手のリズムを完全に狂わせる能力を持っている。
5. マーカス・スマート(ボストン・セルティックス)
2022年の最優秀守備選手賞(DPOY)を受賞したスマートは、フィジカル&メンタルの両面でディフェンスのリーダーだ。1on1の強さはもちろん、チームディフェンスの調整役としても一流である。
PoAディフェンスを磨くには?
もし自身のPoAディフェンスを向上させたいなら、以下のポイントを押さえたトレーニングが有効だ。
1. フットワークの強化
サイドステップを素早く繰り返す「ラテラルムーブメント」
クローズアウト(素早く相手に寄る動き)の反復練習
2. スクリーン対応
ピックをかわして守る「ナビゲートドリル」
スイッチやヘッジを意識した「P&Rディフェンス練習」
3. ボールプレッシャー
スティールを狙う「ハンドチェック&リーチ練習」
相手にボールを持たせない「オンボールディフェンス強化」
これらを日々の練習に取り入れることで、試合で相手のエースガードを封じ込めるディフェンダーへと成長できる。
まとめ
PoAディフェンスとは、相手のボールハンドラーを最前線で抑え込むディフェンスのこと。これが機能すれば、チームディフェンス全体が安定し、相手のオフェンスは機能不全に陥る。
特に現代NBAでは、ピック&ロールを中心とした攻撃が主流であるため、PoAディフェンダーの重要性は過去最高レベルに達している。
もし試合を観るなら、PoAディフェンスに注目してみてほしい。
誰が相手のエースガードにプレッシャーをかけ、ピック&ロールを封じ込めているのか。
その攻防がゲームの流れを大きく左右するはずだ。
Jrue HolidayやMarcus Smartのようなディフェンスマスターが、
相手のリズムを狂わせる瞬間を見逃さずに楽しんでみてほしい。
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