NBAファイナル──バスケットボールの頂上決戦。
けれど、ただスーパープレーを眺めるだけではもったいない。
この舞台に立つ選手たちには、それぞれの物語がある。 栄光に至るまでの苦悩、怪我、トレード、そして這い上がった復活劇──
今年のファイナルに勝ち上がったのは、 地道な育成と結束で戦うオクラホマシティ・サンダー。 柔軟な戦術と闘志で這い上がったインディアナ・ペイサーズ。
派手な補強でも、スターの寄せ集めでもない。 ひたすら努力と信念で掴んだ栄光。
この記事では、そんな選手たちのバックストーリーを紹介します。
試合を観る前に、彼らの物語を知れば、 ファイナルは10倍熱く、10倍面白くなるはず。
──さあ、バスケットボールを超えたドラマを、一緒に目撃しよう。
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オクラホマシティ・サンダーのファイナルへの道のり
オクラホマシティ・サンダー──かつてケビン・デュラントやラッセル・ウェストブルックを擁して黄金時代を築いたこのチームは、2010年代後半に完全なリセットを余儀なくされました。
デュラントの移籍、ウェストブルックのトレード。かつてのスーパースターたちはチームを去り、サンダーは「再建モード」に突入します。勝敗を捨て、未来のためにドラフト指名権をかき集める日々。それは決して楽な道のりではありませんでした。
しかし、ゼネラルマネージャーのサム・プレスティは焦りませんでした。彼は何年もかけて着実に若い才能を集め、育てることに徹します。シャイ・ギルジアス=アレクサンダーの獲得、チェット・ホルムグレンの指名、ジェイレン・ウィリアムズという無名校出身の原石の発掘──サンダーは派手さこそないものの、静かに、しかし確実に力を蓄えていきました。
2024-25シーズン、ついにその努力が実を結びます。若いチームながらリーグ最高勝率68勝14敗を記録し、プレーオフではミネソタ・ティンバーウルブズを圧倒。地道な積み重ねが、サンダーを5年ぶりのファイナルへと導きました。
サンダーの物語は、ただの勝利ではありません。何年もの「苦しい季節」を乗り越え、忍耐強く、信念を持ってチームを築き上げた者たちの結晶です。スーパースターに頼らず、地元コミュニティに根ざしたチーム文化と、若い選手たちの努力と成長。そのすべてが、いま、NBAの頂点を目指して輝こうとしています。
シャイ・ギルジアス=アレクサンダーのストーリー:静かなるリーダーの成長物語
シャイ・ギルジアス=アレクサンダー──SGA。
2018年NBAドラフト、11位指名。 「堅実」「IQは高いが派手さがない」「エリートにはなれない」 そんな評価が、彼にはつきまとっていた。
ロサンゼルス・クリッパーズでのルーキーイヤー、彼はその偏見を覆した。 着実にチームを勝たせ、プレーオフ進出に貢献。 誰もが、これからの彼に期待した。
だが。
クリッパーズは、シャイを切り捨てた。
ポール・ジョージ獲得のために。
SGAと、複数のドラフト1巡目指名権。 未来すべてを手放して、クリッパーズは「スーパースター」を選んだ。
ポール・ジョージ、カワイ・レナード。 彼らが作ったはずの「スーパーチーム」は、結局一度も頂点に届かないまま崩壊した。
──そして、忘れられた男、シャイ・ギルジアス=アレクサンダーは、黙々と成長を続けていた。
オクラホマシティ・サンダーで、誰も見ていないところで。 毎年、スキルを磨き、身体を作り直し、メンタルを鍛え抜いた。
「ディープペイントでの判断」「オフボールディフェンス」「キャッチ&シュート」 ──欠点だったすべてを、武器に変えて。
そして2024-25シーズン、ついにリーグMVPと得点王を手にする。
プレーオフでは、まるでゲームがスローモーションで見えているかのように、サンダーをNBAファイナルへと導いた。
──かつて地味だと見限られた男が、NBAの頂点に立とうとしている。
チェット・ホルムグレンのストーリー:怪我を乗り越えた天才センター
チェット・ホルムグレン。 2022年NBAドラフト2位指名。
誰もが期待した未来のスター。 手足の長さ、しなやかさ、シュート力。 「ユニコーン」と呼ばれ、次世代を担う逸材と騒がれた。
──だが。
プロ初シーズンを前にして、リスフラン関節(足の甲の関節)の重傷。 そのままシーズン全休。
コートに立つことすら許されず、彼はベッドに横たわり続けた。 歩くことすらできない日々。 期待はいつしか、失望と嘲笑へと変わっていった。
──「ガラスの体」 ──「Bust(期待外れ)」
そんな言葉が彼に向けられた。
それでもチェットは、腐らなかった。
リハビリに打ち込み、肉体を作り直し、精神を鍛え直した。 「もう一度、バスケットボールをプレーできるだけで、幸せだ」 ──そう思えるまでに、彼は心を強くした。
そして2025年、チェット・ホルムグレンは帰ってきた。
復帰後は、全く恐れない。 身体をぶつけ、ダンクを叩き込み、3ポイントを沈める。
プレーオフでは16.4得点、8.6リバウンド、2.0ブロック。 若きサンダーのインサイドを支える鉄壁の壁となった。
──寝たきりから、NBAファイナルへ。
挫折を知る者だけが辿り着ける場所に、チェット・ホルムグレンは今、立っている。
ジェイレン・ウィリアムズのストーリー:無名校からオールスターへ、努力で切り開いた道
サンタクララ大学──NBAドラフト候補としては、決して注目されるような名門校ではありませんでした。ジェイレン・ウィリアムズは、そんな無名の存在からNBAへの扉を叩きます。
2022年のドラフト前、多くの専門家は彼を2巡目後半と予想していました。しかし、ドラフトコンバインで見せた卓越したバスケットボールIQと万能性により、一躍評価を急上昇させ、サンダーに全体12位で指名されます。
「予想外の指名」と言われたその瞬間から、彼は挑戦者としての道を歩み続けました。
ルーキーイヤーから確かな存在感を示し、今シーズンはキャリアハイとなる41得点を記録。ついにはオールスターにも選出されました。
小さな大学から大きな舞台へ。ジェイレン・ウィリアムズの物語は、環境や出自に左右されず、自らの力で運命を切り開くことができる──そんな希望を私たちに示してくれています。
ルーゲンツ・ドートのストーリー:ドラフト外から這い上がった鉄壁ディフェンダー
ルーゲンツ・ドート。
2019年NBAドラフト──彼の名前は、ついに呼ばれなかった。 何十人もの選手が夢を掴んでいくなか、ドートは無言でその瞬間を見つめていた。
期待されていたはずの若きディフェンダー。 だが、評価はついにゼロ。指名なし、契約なし。 ──NBAから完全に無視された男。
それでもドートはあきらめなかった。ツーウェイ契約を勝ち取り、Gリーグから這い上がる。 何度も突き返されながら、それでも食らいつき、離れない。
コートに立てば、狂気すら感じさせるディフェンスで相手に噛みついた。 シュート力?派手な得点?そんなものは要らなかった。 相手エースを止める──それだけを武器に、ドートはサバイバルを続けた。
そして、今。
NBAオールディフェンシブファーストチームに選ばれ、サンダーの最終防衛ラインを任された男が、NBAファイナルの舞台に立っている。
かつて名前を呼ばれなかった男が、いまや最大の舞台で、スターたちを沈黙させるためにそこにいる。
──ドートがいなければ、サンダーはここまで来れなかった。
無名から成り上がった守備の職人。ルーゲンツ・ドート、その闘志に、今、全てが懸かっている。
インディアナ・ペイサーズのファイナルへの道のり
インディアナ・ペイサーズ──かつてレジー・ミラーを中心に90年代を沸かせたこのチームも、近年は低迷を余儀なくされていました。プレーオフを逃すシーズンが続き、「地味なチーム」というイメージが定着しつつありました。
しかし、彼らは焦らず、着実にチーム作りを進めます。ビッグネームの獲得に走ることなく、若手の育成と堅実なトレード戦略に活路を見出しました。
2022年、タイリース・ハリバートンを中心とした新たな核作りがスタート。2024年には、元チャンピオンのパスカル・シアカムを加え、経験と若さのバランスを整えます。
ヘッドコーチのリック・カーライルは、選手の個性を活かす柔軟なコーチングでチームに新たな命を吹き込みました。ハイペースなオフェンス、無私のボールムーブメント──どこか懐かしくも新しいバスケットボールが、インディアナで花開きます。
2024-25シーズン、ペイサーズは50勝32敗でイースト4位。プレーオフではニューヨーク・ニックスを撃破し、11年ぶりにカンファレンスファイナル進出。そして、地元ファンの声援を背に、ついにファイナルの舞台へ。
派手さはない。でも、ひたむきな努力とチームワークで積み上げた勝利。ペイサーズの挑戦は、バスケットボールの原点に立ち返るかのような、誠実な物語なのです。
タイリース・ハリバートンのストーリー:トレードが切り開いた新たな道
タイリース・ハリバートン。 高校時代から「天才司令塔」として注目され、ドラフト前も「ナンバーワンPG候補」と騒がれた。
だが、スカウトたちはざわついていた。
──「サイズが足りない」 ──「リーダーとしては物足りない」 ──「地味すぎる」
そんな声がささやかれ、ドラフト当日、彼は想定よりも順位を落とし、全体12位で指名された。
それでもハリバートンは諦めなかった。 サクラメント・キングスで地道に成績を積み重ね、チームの未来を背負う存在へと成長した。
──だが。
それでも、キングスは彼を手放した。 エースとして、心の底から愛していたチームに、無言で背を向けられた。
──「お前は要らない」 そう言われたに等しいトレードだった。
打ちひしがれたハリバートンは、新天地インディアナ・ペイサーズに向かう。 胸にあったのは、悲しみでも怒りでもなかった。 それは、静かに燃え続ける復讐心だった。
インディアナで彼は変わった。
自由に、思うがままにコートを駆け、圧倒的なパスセンスと得点力でチームを牽引。 オールスターに選ばれ、リーグ最高の司令塔の一人へと進化する。
プレーオフでは、32得点、15アシスト、12リバウンド、4スティール、0ターンオーバー。 誰よりも美しく、誰よりも静かに、勝利を積み重ねた。
──過大評価と言われた男が、過小評価され、そして全てを覆した。
今、タイリース・ハリバートンは、NBAファイナルの舞台に立っている。
かつて夢見た場所に、自分の力でたどり着いて。
パスカル・シアカムのストーリー:望まぬ移籍から再び頂点を目指して
トロント・ラプターズでNBAチャンピオンを経験したパスカル・シアカム。
彼はラプターズを「ホーム」と呼び、一つのチームでキャリアを終えたいと願っていました。しかし、ビジネスの論理は非情。2024年、彼は望まぬ形でインディアナへトレードされます。
戸惑い、悲しみ。それでもシアカムは、新天地ペイサーズで再び戦う決意を固めました。
彼はプレーオフでチームを支え、献身的なプレーを続けます。そしてついに、カンファレンスファイナルMVPを受賞。ファイナル進出という新たな挑戦にチームを導きました。
「それが私たちだ」。自らの役割に徹し、勝利のためにエゴを捨てたシアカムの姿は、プロフェッショナルの真髄を体現しています。
マイルズ・ターナーのストーリー:忠誠と忍耐が結んだ大輪の花
キャリアの大半をインディアナで過ごしてきたマイルズ・ターナー。しかし、その道のりは決して順風満帆ではありませんでした。
「6年間トレードブロックに載っていた」と語る彼は、常に不安定な立場にありました。ソーシャルメディアでは「もう終わった選手だ」とささやかれることもあり、精神的にも厳しい日々が続きました。
それでもターナーはペイサーズに忠誠を誓い続けました。コートでは黙々とプレーし、ブロック王の座を手にするなど、実績を積み上げていきます。
そして今、タイリース・ハリバートン、パスカル・シアカムとともに、チームの柱としてファイナル進出を果たしました。
長年の苦労と忍耐が、ついに報われるとき。マイルズ・ターナーの物語は、誠実に努力を続けることの価値を私たちに教えてくれます。
アンドリュー・ネムハードのストーリー:誰にも期待されなかった男が掴んだ、スポットライト
2022年NBAドラフト、アンドリュー・ネムハードの名前は2巡目の31位で呼ばれました。決して目立った指名順位ではなく、周囲の評価も高いものではありませんでした。ミルウォーキー・バックスも彼をスルーし、その選択を後に悔やむことになります。
しかし、ネムハードは静かに、自分の価値を証明していきます。
ペイサーズでは控えガードからスタートし、着実に信頼を勝ち取りました。堅実なゲームコントロール、高いバスケットボールIQ、そしてクラッチタイムでの落ち着き。派手さはないが、チームに欠かせない存在となったのです。
プレーオフでは重要な局面で得点を重ね、3ポイントも高確率で沈めるなど、チームの躍進を支えました。
「過小評価された男」が、NBAファイナルの大舞台でどんなプレーを見せるのか──彼の戦いから目が離せません。
アーロン・ネスミスのストーリー:チャンスを掴むために変わった男
2020年、アーロン・ネスミスはボストン・セルティックスに全体14位で指名された。
「未来のスター」と期待されながらも、彼のキャリアは冷酷だった。強豪セルティックスの分厚いロスターの中、ネスミスに与えられたのは、わずかな出場機会。試合に出ても、すぐにベンチへ戻される日々。
コートに立っても、結果を出すためのリズムも、チャンスもない。
──誰も、彼の名前を呼ばなくなった。
だが、ネスミスは諦めなかった。
2022年、インディアナ・ペイサーズへのトレード。それは、キャリアを賭けた最後のチャンスだった。
ネスミスは、まず身体を変えた。フィジカルを鍛え上げ、強靭なディフェンダーとして生まれ変わった。
次にメンタルを変えた。もはや「3&D」スペシャリストという枠にとらわれない、どんな役割も受け入れる覚悟を持った。
そして、ペイサーズは彼に安定した出場機会を与えた。
ネスミスはそのチャンスをがっちりと掴み、3ポイントシュート、ハードなディフェンス、泥臭いプレー──すべてを武器にして、チームに欠かせない存在へと成長していく。
今シーズン、彼は73試合出場、60試合先発。プレーオフでは勝負所でのクラッチスリーを沈め、相手エースに食らいつくディフェンスで何度も勝利を呼び込んだ。
かつてネスミスを手放したセルティックスは、今、密かにこう思っているかもしれない。
──「あいつを手放したのは、間違いだった」と。
居場所を失った若者が、苦しみを力に変え、今やNBAファイナルの舞台に立っている。 アーロン・ネスミス、その名は、リベンジの象徴だ。
ファイナルの見どころ:勝つのは、信念か、適応か
- 規律と結束で突き進むサンダー。
- 適応と柔軟性で立ち向かうペイサーズ。
両チームに共通しているのは、大金を投じたわけではないということ。(チームごとの総サラリーランキングは、ペイサーズは30チーム中18位、サンダーは23位)
高額補強も、スーパースター集結もなし。 地道な育成と、選手一人ひとりの成長でここまでたどり着いた。
若きエースたち──SGAとハリバートン。 それを支える、苦労人たちの物語。
このファイナルは、単なる優勝争いではない。
自分を信じ、仲間を信じた者たちの、プライドを懸けた戦いだ。
戦術のポイント:どこに注目すべきか
- SGA vs ハリバートン──司令塔対決。静かな闘志が火花を散らす。
- チェット・ホルムグレン vs マイルズ・ターナー──インサイド攻防。新旧ビッグマン対決。
- ペイサーズの柔軟なオフェンス vs サンダーの規律あるディフェンス──戦術のぶつかり合い。
サンダーがペースを支配できるか。 ペイサーズが相手のリズムを崩せるか。
細部の駆け引きが、シリーズの行方を左右する。
そして、何よりも──
この舞台に立っているのは、誰にも期待されなかった者たちだ。
無名、怪我、ドラフト外、トレード、忘れられた才能── すべての苦労と屈辱を乗り越えてきた選手たちが、今、NBAの頂点を目指して戦う。
勝つのは、どちらか。
──信念か、適応か。
──サンダーか、ペイサーズか。
このファイナルは、ただの試合じゃない。
人生を懸けた闘いだ。
24-15シーズンNBAプレイオフファイナルの日程
試合 | 日付(日本時間) | 開始時間 | 会場 | 備考 |
---|---|---|---|---|
第1戦 | 6月6日(金) | 午前9:30 | オクラホマシティ(Paycom Center) | サンダーのホーム |
第2戦 | 6月9日(月) | 午前9:00 | オクラホマシティ | サンダーのホーム |
第3戦 | 6月12日(木) | 午前9:30 | インディアナポリス(Gainbridge Fieldhouse) | ペイサーズのホーム |
第4戦 | 6月14日(土) | 午前9:30 | インディアナポリス | ペイサーズのホーム |
第5戦* | 6月17日(火) | 午前9:30 | オクラホマシティ | サンダーのホーム |
第6戦* | 6月20日(金) | 午前9:30 | インディアナポリス | ペイサーズのホーム |
第7戦* | 6月23日(月) | 午前9:00 | オクラホマシティ | サンダーのホーム |
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---|---|---|
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